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おじゃまします  ―協豊会 中倉関西地区幹事に聞く

 協豊会広報委員会は、12月26日(水)、大阪市西区の東洋ゴム工業竃{社において、中倉社長にインタビューを行いました。会社概要、沿革、企業体質の強化へのお取り組みや、企業活動のベースとなる安全、品質、環境などへのお取り組みなどを中心にお話を伺いました。

「会社概要、沿革についてお聞かせ下さい」
 ◆会社概要・沿革◆
 当社は、終戦直前の昭和20年(1945年)8月1日に創立した会社で、2年後に創立70周年を迎えます。母体は東洋ゴム化工株式会社と株式会社平野護謨製造所の2つありまして、いずれも東洋紡さんが経営関与をしていました。実はタイヤには繊維がたくさん入っており、当初は東洋紡さんの子会社としてできた会社です。昭和18年、東洋ゴム化工が満州でタイヤ製造を始め、一方の平野護謨製造所はタイヤ以外の工業用品を手がけていました。いずれも戦禍で生産拠点が焼けてしまい、互いに困っていた状況から、一緒になって生きる道を探っていこうということで経営統合したのが始まりです。
 設立以降、大阪地区にあるゴム関係の会社を吸収合併していきました。手がけていたのはタイヤ、工業用品、ゴムと金物が付いたものや、橋梁の緩衝材、ホースなどいろいろなものがありました。ゴムは意外と使えるもので、人間で言うところの関節みたいなものです。骨がスチールであれば関節のゴムも必要となり、機械でも、構造物でもそういった関節にあたる部分にゴムが必要になってくるのです。車にもいくつか使えるということになります。
 途中でウレタンを材料にした製品分野にも進出をしました。ウレタンの使用量では当社が日本最大となっています。ウレタンフォームには軟質と硬質とがあり、軟質は自動車用シートクッションやベッドなどの家具に使われ、硬質は断熱材として冷蔵庫やビル等の壁への吹きつけなど、見えないところで結構使われています。当社はその原液を供給しており、市場ではシェアはNO1となっています。
 現在はタイヤが全売上の75%強を占め、残り25%が自動車用の防振ゴムやシートクッション、化学工業製品などタイヤ以外の製品です。自動車に関わる事業が全体の90%程度となっており、グループ横断的に広く自動車産業に立脚してきた会社といえます。


「環境変化が激しい中、体質強化のお取り組みについてお聞かせ下さい」
 ◆海外進出・事業課題◆
 日本のタイヤメーカーとしては、横浜ゴムさん、ダンロップさん、ブリヂストンさんに続く、最も後発のメーカーということもあり、国内市場に入り込むには非常に難しい面がありました。海外に出て「販売会社を作って貿易をやろう」と、1966年に米国ロスアンゼルスに、1975年にはドイツで欧州初の販社を作りました。いずれも日本メーカーで初めての進出となりました。
 海外展開で一番注力したのは建設車両向けの大型タイヤで、世界ではブリヂストンさん、ミシュランさんなどと戦ってきました。国内でも当社はトラックや建設車両向けのタイヤが強く、一方で、乗用車タイヤは自前の小売店網もなく、弱かったのです。自動車メーカーさんでは、トラックよりも乗用車を取り扱う会社が成長していきましたが、タイヤも同様、乗用車を扱っている会社が成長していき、我々はそれに乗り遅れていました。乗用車の補修用(交換用)タイヤ市場をいかに獲得するか。これこそが長期にわたって我々の課題となりました。

 ◆経営ビジョン・中期計画◆
 当社は、タイヤの世界シェアでかつてTOP10に入っていたのですが、韓国勢・中国勢が売上を伸ばしてきた分だけ、最近は下がってしまっています。
これではいけない、成長戦略を描こうと、2010年に中期経営計画を作った際、長期経営ビジョン「ビジョン’20」をつくりました。それまで3年でローリングする中期経営計画をつくっていたのですが、ちょっと届かないくらいの高い志をもった目標値を掲げ、それにチャレンジしていくことをめざしました。
まず10年後のありたい姿として、2020年の売上目標値を今の倍の6,000億円、営業利益を600億円(営業利益率10%)と設定しました。そしてその中間地点(2015年)でどうなっているべきか、というマイル・ストーンとして「中計‘11」を策定しました。売上高4,500億円、300億円(営業利益率を7.5%)がそれです。

 ◆体質強化の取り組み◆
 当社は、海外生産比率が同業他社にくらべて顕著に低く、アメリカ工場が一つあるだけで、あとは日本で作って一生懸命輸出をしていました。為替の影響を受けて利益が上がらない構造にあり、特に低価格品の供給対応がなかなかできませんでした。中期経営計画の最終年度には、20%強だった海外生産比率を40数%まで倍増させようという計画を立てました。
2010年にマレーシアのタイヤ製造・販売会社を買収し、翌年には中国にも自社タイヤ工場を作りました。今春には自社マレーシア工場もオープンします。
海外に出て行かない限りは将来が無いと判断し、大きな投資を伴う海外展開の計画を中計で作り、今はその真最中にあります。お陰様で、だいたい描いた当初目標のとおりに進んでいます。やはり目標値を置いて頑張ってみると、計画は実現して行くものだと実感しています。
企業におけるチャレンジは、上に立つ人が本気でその気にならないとどうしようもないのではないでしょうか。下の人は失敗したら困るものだから安全策しか言いませんし、思い切った案が出てきません。上が「行くぞ!」ということを示さないと下はついて来ないものです。
財務や経理部門ではお金を使うことにビビッてしまう。お客さんを作って、タイヤが足らなくなって困ってはじめて、やっと工場を作ろうとそこで考える。生産を増やすには既存の工場であれば楽なのです。タイヤはいくつかの工程がありますから、ある工程に投資したら全体が上がるという、そうしたラインバランスがあります。足らない所に少し投資すれば生産が上がる、これだけの投資でこんなに生産が上がるというギミックです。国内工場でそんな投資を続けると、設備投資の償却が進まず、追加投資がずっと続き、コストダウンもできず、結果、輸出比率が高まってコスト競争力がどうしても弱くなる。そういうジレンマに長く陥っていました。そこから脱すべく、投資は国内ではなく海外だと舵を切ったわけです。
中国やマレーシアなどへの自社工場進出について、当社は後発参入者です。工場コンセプトは「一番後から出かけるからあえて変わったことをしよう」としました。先行他社では中国や、東南アジアといえばローコストで、「いかに安いモノづくりをするか」というコンセプト。設備も作り方もある程度の基準さえ満足していれば全部安くするというのが目的ではなかったかと思います。
後から参入する我々は、設備コストが少し高くなっても良いタイヤで勝負することにしました。中国は既にそういう市場になっています。安ければいいというものではなく、良いものを欲しがって変わってくる、それに対応できないと駄目だと。新車メーカーさんも良いタイヤを要求してくるでしょうし、我々はそれに耐えうる最新の技術を持って行くことにしたのです。
体質強化についてはこのような積極投資をしながら、販売強化としてBU(ビジネス・ユニット)制を導入しました。これはマーケットにおいて製・販を統合し、責任者を設けて各地域で損益管理を連結で見ていくというしくみです。この管理手法はアメリカの販売会社で最初にモデルをつくり、工場も現地に加わり、さらにホールディングカンパニーを設けました。日本からの輸入品もありますし、現地生産品もある。トータルで見たとき、アメリカ市場では連結で一体どれだけ儲かっているのか。工場と営業とトータルして「貴方たちの頑張りによってこれだけの連結利益が出ていますよ」という管理をやったら上手くいった。これを他の市場でも展開しようとBU制を昨年スタートさせたのです。
生産強化、販売強化、そして内部の管理・間接のスリム化をリーマン・ショック以降続けています。強制的に人を減らすのではなく、仕事のやり方を変えようとしています。本部毎に本部長が自ら考え、組織をフルフラットにしたり、工場の現場で製品開発をしたり、仕事のやり方をどう変えていくのか、それぞれの熟考が形になってきており、少しは手応えを感じています。


「安全、品質、環境」などのお取組みについてお聞かせ下さい」
 ◆在りたい姿に向けた理念◆
 「東洋ゴムグループ行動憲章」として、こう在るべしという理念を憲法のように定めています。これは東洋ゴムグループとしての企業活動の基本的な姿勢を示したもので、その中に安全や品質についても「どう在るべきか」の宣言をしています。
また、昭和25年に定めた社是『昨日より 今日はより良くより安く 需要者の為に 各自の職場で最善を』を今でも変えずに掲げております。この需要者というのはお客様だけではなく、現場や事務職でも後工程の人はみな需要者であるということを定義しています。
さらに、私たちの企業理念の中では、「独自の技術で」と「新たな価値」という言葉を取り入れて謳っています。製造業は価格競争を行うのではなく、新しい価値を創って行くということをきちんと定義したいとの思いから理念の中に盛り込みました。

 ◆品質への取り組み◆
 品質については、我々が約束する企業理念を守っていくということであり、グループ行動憲章に先立って、「TOYO製品安全憲章」というのを作っています。ここで品質に対する考え方や行動基準を盛り込みました。またこれを基に中期経営計画において、「品質」のあるべき姿を謳い、品質保証体制の整備を計画的に年度計画に織り込むことができるように展開しています。実行体制は生産本部長ではなく、「QA委員会」がこれを担っています。この委員会はTMC(技術統括本部/テクノロジー・マネジメント・センター)の役員が長を務めるもので、品質、QAの向上にどう取り組んでいくかの方策や計画を策定しています。

 ◆安全への取り組み◆
 我々は製造業であり、「全てに安全が優先する」ことを常々社内に意識喚起を図っています。しかし一昨年当社は大きな労働災害を出してしまいました。ショックで工場全体が意気消沈してしまいました。もう二度とこんな思いを互いに抱くことのないよう社内で約束し合いました。
まずロボットは全て総点検をして、必要な投資を行い設備改善を果たしました。工場内では「止める・呼ぶ・待つ」運動を展開し、機械を止めて、担当を呼び、来るまで待つことを徹底する活動を始めました。安全については、特効薬などなく、諦めずに地道に活動するしかありません。繰り返し、繰り返し、手を変え品を変えやっていくということです。まずは安全、そして品質、開発、コストという順序の「SQDC」で考えるように言っています。会社というのは家族や自分の幸せを作るために来ている所であり、その幸せのために来ている場所で不幸になってはならないと固く思いました。事故が起これば会社も不幸になってしまいます。


「関西地区幹事さんとしての協豊会活動についてのお考え、メッセージをお願いします」
 私が社長に就任したのち、社長としてどうことをしたらよいか分らない時に、協豊会に入って随分と助かったという思いがあります。社長というのは、やってみないとわからないと思いますが、「”山のてっぺん”に居るようなもの」なのです。雲が来れば雨を最初にもろに被る、雪が降る、風が吹くで、逃げるところがありません。低い山も高い山もそうです。高い山は大きな企業で、装備が良くて後ろにはシェルパーとかポーターも居るかも知れないが、その代わり気象条件が厳しくて、温度も低いし風も強い。低い山はそれほどきつくはないけれども装備が無い、後ろを見れば誰も居ない。役員さんもちょっと風が吹いてきたら石とか木の蔭に隠れてしまい、周りには誰も居ない。
 協豊会の良いところは「社長、トップが必ず出る」というところです。他企業のトップの方と会話ができる機会がありましたので、もの凄く助かりました。ああ同じようなことを思っておられるとか、あの優秀な会社でもそうなのかなど、こういうことが実感としてわかるのです。この実感は非常にありがたく心強いものとなりました。
たいていの会合は代わりに行って来てくれと皆スポイルしてしまう。そうすると会も駄目になってしまいます。皆が恰好だけつけて蔑にしてしまうからです。ところが協豊会はそれをやらせない、トップが出てこないと駄目だとなります。トヨタさんが凄いのは協豊会に対して調達のトップが必ず出て来られることです。年間で総会、ゴルフ大会、幹事会、経営者懇談会など結構大変だと思いますが、トヨタさんもスポイルしませんし、会員会社もスポイルしません。このトップ縛りを守ってやっていることが良いことなのだと思います。トヨタさんから色んな情報提供も頂けますし、一緒に集まればあなたのところはどうだったのとか、中国ビジネスは今はどうなっているのかなど自然と話ができて、気持ちが救われる思いでした。


最後に「ご趣味、座右の銘、信条などお聞かせください」
 ◆座右の銘◆
 座右の銘は「我より古(いにしえ)を作(な)す」です。漢字で書くと「自我作古」、自ら率先して改革をしますという意味の言葉です。これは中国の宋の時代にあった言葉ですが、日本では明治になって、慶応義塾で広まったものです。私は社長になった時に、「革新をすることが仕事だ。革新が出来ないようだったら辞めなければいけない。胡坐を掻いてはいけない」といった思いで、この「我より古を作す」を座右の銘としました。
 
 ◆趣味◆
 趣味は広くて、本は読みます。いろんな雑学というか新書本が結構好きです。私の見方だけかも知れませんが、よく読んでみると理系の人の書いた本が面白い。自分が理系だから言うのではありませんが、理系の人が書いた本は、例えば、動物や植物の世界、病気の話、宇宙の話とか、それは面白い。自分が半生をかけてやってきたことの集大成みたいなことを凝縮して、書き手も上手い人が結構いて、面白く書いてある。最近読んで面白かったのは、村山 斉さんの『宇宙は何でできているのか』ですね。宇宙の大きさは10の27乗mであり、小さい方では素粒子の大きさは10のマイナス35乗mです。我々がタイヤに使う材料で見極めているのは「ナノ」の単位で、10のマイナス9乗なのです。
 また松ぼっくりを集めて眺めているのが好きです。これは昔、若い時にアフリカに出張で放り出されて、ホテルでとても大きな松ぼっくりが置いてあるのを見て驚いたのが始まりでして、それから海外に行ったら集めてくるようになりました。また、松ぼっくりは「種」ではなく「殻」であり、種を持ち込んではいけません。それを知った社員からも情報が入るようになり、どんどん集まり出して、今や私の部屋は松ぼっくりだらけになっています。これは場所さえあれば、ほとんどお金は掛かりませんから奥さんも反対はしませんよ。でも努力は要ります。松脂が出るのでそれを取らなければならないし、虫がいるかも知れないのできれいにしておかなければならない。種類が違った、大きなものが一杯あり、とても大きなものなどを皆に見せて驚かせるのも楽しみです。「うわぁ、こんなにデカイの!」と。
それと、貝殻を集めるのもやっています。沖縄に行って、魚市場の料理屋でとても綺麗なアコヤ貝やホタル貝の貝殻をいただいたのが始まりです。良いものがあると、家に持って帰り、洗って飾っています。綺麗なものですよ。



本日はお忙しいところ、ありがとうございました。






中倉社長(中央左)を囲んで・・・
石塚広報委員長 (太平洋工業 取締役専務執行役員):中央右
黒崎広報委員 (パイオニア 上席常務執行役員):左
小谷事務局長 :右
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