おじゃまします ―協豊会 石野関西地区副会長に聞く―
 協豊会広報委員会は、9月2日(水)に関西ペイント㈱本社(大阪府大阪市中央区今橋)において、石野代表取締役社長にインタビューを行いました。
 石野社長には会社概要、沿革、企業体質強化へのお取組みや、関西地区副会長として、協豊会活動へのお考えや思いなどのお話を伺いました。
「会社概要、沿革についてお聞かせ下さい」
◆国内初のラッカーを発売◆

 当社は岩井商店(現、双日)の創業者である岩井勝次郎が、1918年に兵庫県尼崎市に設立しました。当時は、第一次世界大戦で海外からの商品や原料の輸入が途絶え、「海外製品に負けない国産品を作ろう」と考えたのがきっかけでした。そして、岩井は“技術の関ペ”のオリジンとなる「独自の新製品を他社に先んじて開発し、品質で勝負」をモットーにして、1926年には速乾性のあるラッカーの開発に成功し、国産初のラッカー「セルバ」を発売してから総合塗料メーカーとしてスタートしました。

◆かなり早い時期からの海外進出とグローバル展開への取組み◆
 当社の海外への進出は、歴史的には船舶用塗料の海外進出が早く、1950年代には台湾、1960年代にタイ、そして1980年代にはインドにも進出するなど、国際化にはかなり早くから取組みました。1990年代に入ると日本の自動車メーカーが東南アジアに本格的に進出しましたので、当社も自動車メーカーとともに自動車用塗料事業の国際化を進めました。
 同時に、日本は連結経営時代の幕開けを迎え、それまでと異なりマジョリティー化に動き出してきましたが、当社も既存合弁会社の出資比率を見直したり、新会社では当初からマジョリティー出資を実施したりして、自分たちで経営することを実践してきました。
 2008年のリーマンショック以降は特に、新興国の台頭に着目し、そこで爆発的に伸びる建築・防食用塗料のグローバル展開にも力を入れ、2011年に南アフリカの最大手塗料メーカーを、2012年にはインドネシア、2013年にはジンバブエ、2014年にはマレーシアの塗料メーカーを買収しました。
 このように国際化を進め、今は売上の海外比率が6割となり、かつて建築用塗料の売上は自動車用塗料が連結売上の45%に対し15%と1/3だったのが、今や両方とも30%と肩を並べました。
 会社の設立から間もなく100年を迎えますが、その次の100年では世界のトップ企業になろう、折角だから夢を持って、世界で№1と云われる会社になろうと皆に言っています。


「環境変化が激しい中、体質強化のお取組みについてお聞かせ下さい」
◆7つの極によるグローバル化でグループ経営基盤を強化◆

 グローバル化を進めるに当って、現在は日本、中国、アセアン、インド、中東、アフリカ、それ以外という7極に分けて、バランスを取りながらそれぞれの極で事業拡大を進めています。限られた経営資源の中でシェアを伸ばし、№1になるためには、巨大需要が期待出来る新興国で、最大かつ最速で成長する建築需要セグメントをスピード感を持って取込む必要がありますが、現地では長い歴史の中において培ったやり方や人脈などがあり、日本流のやり方は全く通用しません。ただ、オペレーションの単位を国ごとに対応していては、開発、生産、購買でのボリューム効果が生まれません。そこで、同じカルチャーや品質の地域でまとめて、世界を7分割することにより、個別市場への対応が可能となり規模のメリットも活用できますし、少ない人員で効率よく業務遂行できます。その7つの地域に責任と権限を委譲していくとともに、ブランド・製品・購買・管理などを統合し、生産の集約を行っています。その地域ごとにおいた拠点をベースに、その周辺国へ事業展開を図ります。それぞれの地域の運営は優秀な現地の人材に出来る限り任せています。日本人のリソースは限られていますし、日本人をアフリカに送って頑張ってもらうよりも、現地の優秀な人材に当社の企業文化を理解してもらい、関西ペイントの規範で仕事をしてもらった方が強い競争力を発揮することができるでしょう。現地の人たちも責任と権限を与えられると、業績を伸ばそうと一生懸命になります。業績の拡大は当社にとってメリットであり、現地の人たちにとってもその成果を受け取る仕組みになっているので、両者にメリットがあります。

◆ベストプラクティスを学び合うことで事業体質を強化◆
 グローバル化の効果を発揮するためには、グループ全体で様々なノウハウを共有することが大切だと思っています。私が社長に就任してから、各国のトップたちが一堂に揃うグローバル会議を毎年4~5回、日本で開催しています。グループ各社のコスト管理、人材育成、商品企画、生産方式、販促方法等のベストプラクティスを発表する場です。グループ全体で成果を披露する場がある一方、様々なノウハウやアイデアを吸収する場を設け、グループ内イノベーションを意図しています。例えば、塗料の生産技術は日本が一番優れているとは限りません。日本の生産方式は、工場ごとの品質に注力してしまいがちです。しかし、本来は生産工程も原料の調達から生産、そして製品やサービスをユーザーに届けるまでのサプライチェーン全体で捉え、回転率を上げ生産性を上げなければならないのです。そのための生産方式はモジュールの考え方、工程間作業の削減、ITの活用等あり、この観点でみると、日本より優れたやり方を持つ海外のグループ会社もあります。このように出来るだけ多くのベストプラクティスを我々のグループ会社内で学び共有していくことで、グループ全体のレベル向上を図っています。私は、常々「自前主義から脱却せよ」と言っています。そうしないと時間とコストがもったいない。グループの内外にいいものがあれば謙虚に学んで共有し、それを自分たちで改善してまた共有化すればいいと考えています。現場を強くすべきということです。


「安全、品質、環境などのお取組みについてお聞かせ下さい」
◆安全だけは1極による集中管理◆

 当社ではグローバル展開を7極に分けていますが、安全についてだけは1極集中にして、一番レベルの高い日本の安全基準をマニュアル化して全世界に横展開するという、集中管理にこだわっています。それは安全が何よりも最優先すべき課題だからです。どんな小さな事故でも何かあれば、全世界の工場から連絡が入りますし、再発防止の指導を徹底するとともに、全工場に横展開をしています。さらに現地の安全パトロールは当然として、日本の専門家が海外各社の監査を定期的に行っています。海外関係会社の安全への取組みも含め、これからも安全対策には持続的事業継続の最重要事項として徹底的に取組みます。

◆設定品質を徹底的に守る◆
 品質には2つあり、ひとつは「設計品質」で、世界の各地域の状況に合わせて最適なスペックとしての品質を設定するというもの。もうひとつは「製造品質」で、適正なスペックに100%合格する製品を作るということ。つまり、品質は国や地域によって異なります。但し、設定された品質は徹底的に守るというのが当社の考え方です。当社が長年築いてきたブランドへのお客様の信頼を絶対に裏切る訳には行きませんから。

◆低環境負荷、高性能・高機能製品の提供◆
 環境に関しては、人間と環境への影響を配慮した製品を“環境配慮塗料”と定義し、年々その販売数量比率の向上に努めています。VOC含有量の少ない水性や粉体塗料や、消臭性・吸湿性などの室内環境改善に加え、SARS、MARS、エボラ等のウィルスを殺菌し、二次感染を抑える漆喰塗料、特に東南アジアの工場で役に立つ屋根・壁・ガラス面の温度上昇を抑えて省エネ効果が期待できる遮熱塗料、工場内へ虫を入らせない虫よけ塗料などがあります。
 また自動車塗料における環境への取り組みでは、水性化に変更することでVOCを削減、焼付乾燥工程を削減することで省エネ化でCO2の削減に取組んでいます。


「関西地区副会長さんとして、協豊会活動についてのお考え、メッセージをお願いします」
◆ベストプラクティスの場◆

 協豊会での機会を皆さんがシェアできるというのは素晴らしことだと思っています。トヨタさんと私どもサプライヤーの双方向コミュニケーションを通じて、何が重要なことなのか、或いは安全や品質について学べる。協豊会メンバー同士で知り合えること以外に、大変有難いのは、実際にクルマに触れ、工場見学ができ、時にはトップの方々の話が直接聞けることです。その一つひとつに発想、学びの種があり、正にベストプラクティスの一種だと思います。このような活動を是非続けて行ければと思いますし、私も貢献をして行きたいと思います。


「ご趣味、座右の銘、健康法などお聞かせ下さい」
◆ご趣味◆

 身体を動かすのが好きな運動系で、学生の頃は柔道の個人戦で、神戸市の大会で優勝し、兵庫県大会では準決勝まで行きました。会社に入ってからはスキューバダイビングをずっとやっていて、ダイビング歴は40年を迎えます。来年、当時の幹事会メンバーの一員として、当時毎年潜っていた沖縄の西表島で潜る企画を立てたところ、50代半ばから70代後半まで、かつての美男美女40名近く集まることになりました。非常に楽しみであると同時に幹事の1人としては、うるさい連中をまとめるのが大変と今から心配しています。健康管理では、通勤での梅田と本社ビルの往復に加えて、帰宅後も自宅の周辺を歩いています。また、週末には1kmずつを2回泳いでおり、海外出張にも水着とゴーグルを持参しホテルのプールで同じく1km泳いでいます。

◆座右の銘◆
 好きな言葉は、一つは「着眼大局、着手小局」です。特に、着手小局の方は「小さい所で転がし出しをさせる、駄目ならすぐに修正する。先ずは転がし出させなとずっとスタートできないから」に「小さなことを疎かにしない」を自戒の意味を込めて加えています。
 二つめは「原因自分説」です。「自分の身に降り懸かることは何らかの形で、自分に原因があり、どんなに環境・条件が悪くても、その中で“私が”どうするかが問われている」と言うものです。特にフィリピンにいた時には、現地スタッフの能力を問う前に、自分含めて日本人全体の指示の仕方を反省したものです。



本日はお忙しいところ、ありがとうございました。



   石野社長(中央左)を囲んで・・・
  石塚広報委員長 (太平洋工業㈱ 取締役副社長):中央右 
  釣谷広報副委員長 (パイオニア㈱ 執行役員):左
  小谷事務局長 :右



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