おじゃまします ―協豊会 野地関東地区幹事に聞く―
 協豊会広報委員会は、12月21日(月)に横浜ゴム㈱本社(東京都港区新橋)に於いて、野地代表取締役社長にインタビューを行いました。
 野地社長には会社概要、沿革、企業体質強化へのお取組みや、関東地区幹事として、協豊会活動へのお考えや思いなどのお話を伺いました。
「会社概要、沿革についてお聞かせ下さい」

 当社は、1917年、横濱電線製造㈱(現在の古河電気工業)と米国BFグッドリッチ社との共同出資により、「横濱護謨製造株式会社」として、神奈川県横浜市鶴見区(現在の「ゴム通り」)に設立されました。
 横濱電線製造㈱は当時電線を製造しており、電線に使用する皮膜のゴム技術と米国BFグッドリッチ社のタイヤ製造技術を導入することにより、自動車タイヤ、ベルト、ホースなどの国産化を図り、日本の工業近代化に貢献することを目的として設立されました。ちなみに、旧帝国陸海空軍の車両に使用されていたタイヤは、100%横浜ゴム製でしたし、第二次世界大戦時の戦闘機「零戦」「隼」のタイヤも横浜ゴム製でした。

◆【創業の精神】◆
 当社の創業の精神ですが、1929年、社長の中川末吉が横浜工場(横浜市鶴見区)開設に際して述べた訓話を「創業の精神」としています。
 1. メーカーは社会奉仕。人の生活を幸せにするため、良いモノを安く、そして便利なモノの提供を目的とすべきである。
 
 2. 優れたモノの提供が根本方針。(他社の追従を許してはならない)
 3. 公平公正な経営。(経営者は資本家への保証、従業員への分配、そして消費者への義務を公平、合理的に分配することが任務である)
 
 4. 能率の向上。(機械を利用して従業員数を抑えること)
 5. 事業の成否は努力次第。(一生懸命勉強し、互いに向上発展をめざして努力すること)
 創業の精神は以上の5つとなりますが、この創業の精神を忘れない為に、たびたび朝礼等の中で社員の方々に対して適宜説明し、精神の継承を図っております。

◆【GD100(グランドデザイン100)】◆
 冒頭ご紹介があった様に、当社は、2017年で100周年を迎えます。と言うこともありまして、2006年に【GD100(グランドデザイン100)】を策定しました。2017年の12年前倒しで2006年から3年間を1フェーズとして取り組んでおり、現在はフェーズIVの1年目となります。これは、【GD10(グランドデザイン10)】(158と言いまして、資産回転率1回転以上、5%以上の成長、8%の営業利益率を目標に取り組みました。)に続く、中期経営計画という位置付けとなります。
 GD100の基本方針は、以下の3項目となります。
 1.  「良いモノを、安く、タイムリーに」
 2.  「トップレベルの環境貢献企業になります」
 3.  「高い倫理観を持ち、お客様最優先の企業風土を作り上げます」
 2006年度に立てた「GD100」の財務目標は2017年度に売上高1兆円、営業利益1,000億円、営業利益率10.0%としていましたが、経済環境の変化などにより、フェーズIVでは2017年度に売上高7,700億円、営業利益800億円、営業利益率10.4%としています。
 【重点取り組み項目】についてご説明します。
 ポスト「GD100」を見据え、フェーズⅣの期間に総額1,200億円を投じ、タイヤ年間生産能力を2014年度末の6,800万本から2017年度末までに7,400万本、2020年度末に8,900万本まで引き上げる計画です。
 現在、フィリピンと中国で拡張工事が進行しているほか、米国ミシシッピ工場が本年稼動する予定です。さらに海外では工場新設や拡張を検討しており、2017年には全生産能力に占める海外生産能力比率を50%(2012年は40%)まで高める計画です。
 MB事業戦略では「自動車部品ビジネスのグローバル展開」「海洋商品でNo.1カテゴリーを拡大」に注力しています。
 このほか「グローバルでの建機・鉱山ビジネス強化」「独自技術を応用した新規事業の拡大」も着々と進めており、新規事業向け商品のひとつである高圧水素ガス用ホースは全国の燃料電池車向け水素供給ステーションに採用されています。

◆【我が国初の商品】◆
 当社の商品について、ご紹介します。当社は我が国初の商品を数多く市場に投入しています。1932年バルーンタイヤ販売を始めとして、1954年のチューブレスタイヤ、スノータイヤ、1971年の乗用車用スチールラジアル・チューブレスタイヤ「G.T.スペシャルスチール」等の我が国初となる商品を市場に投入してきました。タイヤ事業以外にもMB事業(マルチプル・ビジネス)と呼んでおりますが、主にパワステ・エアコンホース等のホース配管事業、ウインドシーラント等のシーリング剤関係のハマタイト事業などゴムから派生した商品が数多くあり、自動車メーカーさんにはタイヤ同様、ご採用頂いております。
 ウインドシーラント等のシーリング剤は、12/9に発表されましたトヨタ自動車様の新型プリウスにも採用されています。当社は、自動車のテストコースを保有していますので、今後もこれを強みにしながら、商品開発に努めたいと思います。
 世界シェア1、2位を競う商品とすれば、原油をタンカーからタンクに供給するマリーンホースや船舶同士の緩衝材である防舷材があります。その他に航空機のラバトリーモジュール、ウォータータンクやゴルフ用品のプロギアがあります。プロギア契約プロの小平 智プロ、矢野 東プロ、原 江里菜プロや藤本 麻子プロの来年の活躍に期待しています。

◆【基本理念】◆
 1992年には「心と技術をこめたモノづくりにより、幸せと豊かさに貢献します」を基本理念として制定し、同年 社内公募による「すごいをさりげなく」のスローガンを発表しました。
 私とすれば、スローガンの「すごいをさりげなく」と言う表現は、日本人の感性では理解できますが、海外ではなかなか説明が難しい表現だと感じています。海外では、「すごい」ことは凄いと説明し、プライドを持って生産活動に参加して頂く事が大事だと考えています。今後グローバル化が進む中では、通じ難くなると思っておりますので、表現については一考の必要性を感じております。


「環境変化が激しい中、体質強化のお取組みについてお聞かせ下さい」

 当社は、環境変化や過去の様々な危機に対して、ADVAN等の新商品を市場に投入し、乗り越えてきました。今後の課題としては、会社のブランド価値を更に向上させることが必要と考えております。

◆【ブランド価値の向上】◆
 ブランド価値の向上の施策としまして、今年度イングランドプレミアリーグのチェルシーFCとスポンサー契約を結びました。ユニフォームの胸には、「YOKOHAMA TYRES」のロゴが入っております。チェルシーFCは、全世界に5億9百万人のファンが居ると言われております。この方々に、横浜タイヤを知って頂き、横浜ゴムが主要自動車メーカーにタイヤを供給していることやモータースポーツへの関わりを認知して頂く事で知名度が向上し、購買への機会となればと考えております。
 また、グローバル展開として、2001年には独コンチネンタル社と戦略的提携で合意し、2002年には同社と合弁会社「ヨコハマコンチネンタルタイヤ㈱」を設立、新車メーカーさんとの取引窓口として稼動しております。この様な活動を通して、横浜ゴムのブランド価値が向上し、ビジネスが拡大するものと考えています。企業体質強化に取り組んできた結果としまして、赤字の事業が減少し、営業利益率が改善されてきたと思っております。

◆【副工場長時代の実体験】◆
 企業体質強化に関する私の経験をお話します。私が副工場長時代の事ですが、トヨタ自動車の林 南八様に、横浜ゴムの工場に数回/年お越し頂き、TPS(トヨタ生産方式)のご指導を頂きました。この時徹底的に、TPSについての考え方を学びました。当時の横浜ゴムの生産方式からすると、天動説から地動説に変わる位違う考え方でしたが、私の経験上大きな転機だったと言えます。この頃に、横浜ゴムの工場の生産全体が大きく変化し、工場の体質が強化されました。現在でも当社は、タイヤをロット生産していますが、この時のご指導のお陰だと思っております。
 生産については、強化されてきておりますので、今後は完成在庫の観点で、SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の強化を図りたいと考えております。


「安全、品質、環境などのお取組みについてお聞かせ下さい」
 
◆【安全について】◆
 当社は過去、3年連続で重大災害を経験しています。この時に「安全衛生推進室」を新設しました。この「安全衛生推進室」を中心に、全世界の工場で、徹底したリスクアセスメントを実施し、設備的に災害が発生しない様対策を講じてきました。具体的に言いますと、レベル5のリスクについては、生産をストップした上で、設備上の対策を講じました。費用は掛かりましたが、この活動を継続することで、災害は減少しております。大きな休業災害もお陰さまで減少してきております。
 当社の工場の管理指標は、SEQDCH(安全・環境・品質・納期・コスト・ヒューマン)と設定しています。私が生産本部長時代に全世界の管理指標として設定しました。夜勤等で管理者が不在の時は、シフト長に権限を移譲し、この優先順位で問題に対して対応するよう指導しております。なんと言いましても、安全第一だと思っております。その為に、管理指標の1番はS(安全)としています。

◆【品質について】◆
 品質についてご紹介させて頂きたい手法がございます。それは、品質管理手法で「PYB管理」です。
 「PYB管理」とは、発生した品質異常に対し、P:ピンク(品質異常発生)Y:イエロー(緊急対策)B:ブルー(再発防止策終了)と進捗状況を色で識別し、進捗を「見える化」する管理方法です。こうする事で一目で進捗状況の把握が出来ます。
 工場では、1回/月の品質会議で、「PYB管理の進捗状況」をフォローし、対策状況を確認しております。工場には、この進捗表が掲示されておりますので、我々も工場を訪れた時にその工場の品質の状況が一目で把握出来ます。大変役に立っています。この品質管理手法は有効だと思っていますので、是非皆様の会社でも活用して頂きたいですね。


「関東地区幹事さんとして、協豊会活動についてのお考え、メッセージをお願いします」

◆【情報共有の場】◆
 先程申しました、コスト以外のSEQDHに関して会員各社で情報が共有され、相互で改善が進む事が望ましいのではと思っています。その様な情報交換会が出来れば良いのではと考えております。
 また個人的にも経営者懇談会等で、各社のトップの皆様と出会い良い刺激になっており、とてもプラスになっていると感じております。
 協力会社との真のパートナーシップを目指し、双方向コミュニケーションを大切にされるトヨタさんのお考えが会活動を通じ良く伝わり、とても有意義に感じております。
今後もこのような活動は継続していく事が大切だと思います。


「ご趣味、座右の銘、健康法などお聞かせ下さい」

◆【ご趣味】◆
 趣味と言えば、車と水泳とゴルフですね。水泳とゴルフは、8年前からレッスンを受けています。学生時代ラリーをやっておりまして、今でも車は大好きです。車をコントロールするのは、最高に楽しいですね。
 今後日本は、もっと公道でモータースポーツが出来るように規制を緩和して、若い方々に自動車に興味を持って頂く必要を強く感じます。そうしないと、「いいクルマづくり」に繋がらないですよね。

◆【座右の銘】◆
 私は「諦めたら、そこで、試合終了ですヨ」を座右の銘としています。(スラムダンクの安西先生が三井君に話した言葉)中学生や高校生に話す機会がありますが、この言葉はよく理解してもらえますね。



本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
野地社長(中央)を囲んで・・・
石塚広報委員長 (太平洋工業㈱ 取締役副社長):中央左 
  横山広報委員  (リョービ㈱ 取締役常務執行役員):中央右  
  小谷事務局長  :右  
  大村事務局次長  :左  
    (2015/12/21撮影)         

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