■ 会社概要、沿革についてお聞かせ下さい。 ■
富士通テン㈱は本年度で創立44周年を迎えました。富士通㈱より、ラジオ部門および自動車関連電子機器の専業化による強化拡充のため1972(昭和47)年10月25日
分離設立し、同年12月1日より操業を開始しました。
当社事業の源流は川西機械製作所<1920年(大正9年)創立>の真空管ラジオ開発ですが、もともと川西財閥系の会社で、その子会社川西航空機が「紫電改」を製造していました。その後神戸工業㈱・富士通㈱のラジオ部門を経て現在に至っております。自動車向けとしては、1955年(昭和30年)神戸工業㈱時代にトヨタ自動車㈱様「クラウン」向けにカーラジオの納入を開始した事が始まりです。
トピックスとしまして、当社の前身である神戸工業㈱に在籍した方からノーベル物理学賞受賞者を2人輩出しています。江崎玲於奈さん(超伝導体内でのトンネル効果の功績)と赤﨑勇さん(高輝度青色発光ダイオードの実現の功績)の2名です。当時は半導体産業の先進的・先駆的な取り組みをしていた事が特徴で、技術にこだわるDNAは今でも脈々と受け継がれています。
会社の状況ですが、今年度売上は3700億円を計画しており、海外売上と国内売上の比率がほぼ半々となっています。生産体制としては、海外に10工場、国内に3工場の13工場をグローバルに展開しています。生産規模でいいますと約7割が海外生産となります。今後は経営についても現地化を推進したいと考えています。
<社名の由来>
社名「富士通テン」の「テン」は、最高、至上を意味する「天」のことです。
中国古典の「中庸」に「誠は天の道なり。これを誠にするは人の道なり。」という一節があり、「誠」を企業理念としており、私としても常に大切にしている言葉です。
前身の「川西機械製作所」「神戸工業」以来「天」「テン」「TEN」が商標として使われました。
<企業理念>
『私たちは、「誠」を大切にして働き、お客様・社会に貢献します。』
<事業ビジョン>
『人とクルマ、社会とクルマをつなぎ、自由で快適なモビリティ社会の実現に貢献します。』
<主な事業>
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✔ V-ICT事業:Vehicle-ICT |
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マルチアングルビジョン、ミリ波レーダー、緊急通報システム、通信型ドライブレコーダー など |
✔ CI事業:Car Infotainment |
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カーナビゲーション、ディスプレイオーディオ、CDチューナー、音響システム など |
✔ AE事業:Automotive Electronics |
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ハイブリッドECU、電動パワーステアリングECU、エンジン制御ECU、エアバッグECU など |
■ 環境変化が激しい中、体質強化のお取組みについてお聞かせ下さい。 ■
体質強化についてですが、2016年度の重点施策として四点を挙げて強化を図っております。
Ⅰ. 富士通グループの車載機メーカーとしての事業強化
Ⅱ. 事業体質の強化: QCD+E(エンジニアリング)を磨く
Ⅲ. 経営基盤の強化
Ⅳ. 人づくり/風土改革 |
その中の「風土改革」についてお話させていただきます。
私の問題意識として当社は「トップダウン型」の事業体質で、部門内や部門間の連携が不足していると感じています。この状況ですと、多様な智恵や発想が出て来なくなると考えていますし、最終的には商品力やお客様への提案力に影響してくると思います。
その施策の1つとして、まずは役員レベルの「教育プログラム」の導入、幹部社員の研修会や社長と一般社員の座談会を実施し、問題意識に対する意識改革に継続的に、また実際の業務で活かせる様に取り組んでいます。特に日頃会話をすることのない一般社員との座談会では、社長の考え・思いを直接伝えて腹落ちしてもらうことに加え、彼らの考え・思いなどを直接知ることができ、当社の将来に期待が持てると感じています。
■ 安全、品質、環境などのお取組みについてお聞かせ下さい。 ■
「安全」については、トヨタ自動車㈱様の指導や、協豊会の安全関係の取組みを参考にしっかりと取り組んでいます。
「品質」については、これは企業の生命線だと考えています。毎月開催している幹部会や、社長メッセージを直接全従業員に伝える社内イントラ「社長室」も活用して、その重要性について社員への浸透を図っています。
また「環境」については、「環境中長期VISION」を策定し、温室効果ガス排出量の削減等に取り組んでいます。
具体的には、
<安全>
富士通テングループは、安全衛生憲章に示した「従業員の安全と健康の確保が経営の基盤である」という基本理念のもとに、安全で快適な職場づくり、心身の健康づくりを積極的に推進しています。
安全面では、OHSAS18001に基づく労働安全衛生マネジメントシステムを確立し、リスクアセスメントによる危険源抽出・対策を中心とした「労働災害の未然防止活動」に重点を置き取り組んでいます。
健康推進面では、従業員の健康意識の向上を図るセミナーや健康指導、産業医の面談等「心身の疾病予防活動」に取り組んでいます。
<品質>
品質については、品質会議等を通して本質まで掘り下げる習慣を身につける事が重要と考えています。またここ2~3年は、ソフトウエア関係の品質問題の比重が高くなってきています。これは、設計の上流から品質を確保しなければなりません。私は富士通㈱時代ソフトウエアの部門を担当しておりましたので、富士通㈱の仕組みやツール(プロジェクト・マネジメント)を導入して上流から建て直しを図っています。
また、従業員には以下の二つの観点で行動するよう求めています。
まず「自工程完結」で品質担保する事です。自部門で責任を持って何をすべきか一人ひとりが考える事により実現できるはずです。もう一つがEDER(*)による問題潰し込み、徹底的な再発防止です。問題の芽を素早く掴み、絶対に再発させない知恵を絞る事を求めています。
2016年度は“品質は、「誠」を映す鏡なり”をテーマに品質啓発活動を推進しています。特に11月は「品質月間」として「社長メッセージ発信」、「再発防止事例展示会」、「品質講演会」といったイベントを実施しています。
(*)EDER:Early Detection and Early Resolution 早期発見、早期解決
<環境>
今年6月に環境中長期VISION実現に向けた「第8期環境取り組みプラン」を策定、公開しました。
詳しい項目や目標値は当社のCSR報告書を会社ホームページに公開しておりますが、グローバルでの環境活動を活性化させるため新たに「環境貢献賞」を設けて各拠点の顕著な活動を幾つかのカテゴリー毎に私から表彰しています。グローバルの統合マネジメントシステムは改訂版新規格に順調に移行完了しつつあります。また、パリ協定でも大きな話題となった温室効果ガスの削減については排出量(生産高当り)をグローバルで18年度末には11年度比27%の削減目標を掲げて活動中です。
■ 関西地区幹事さんとして、協豊会活動についてのお考え、メッセージをお願いします。 ■
協豊会の活動は非常に役立つ場であると感じています。豊田章男社長様をはじめ役員の方々の生のお声(想い・熱意・こだわり等)をお聞かせいただけますし、お人柄も直接感じることは貴重な機会であると考えています、また試乗会や現地視察会等を通して現場・現物に接することが出来る点は大いに参考になります。協豊会はこの様な場を提供していただける活動ですし、様々な部会活動も真剣に取り組まれており大変役立つ活動であると思っております。
■ ご趣味、座右の銘についてお聞かせ下さい。 ■
<趣味>
私は、美術鑑賞が好きです。出張時に時間が取れれば現地の美術館に足を運んでいます。特に中世宮廷画は画の中にメッセージ性があり好きな分野です。東京美術館や上野美術館もよく訪れます。
また長野市出身ということもありまして、野山を散策することも好きです。
<座右の銘>
仏教用語の「脚下照顧」という言葉が好きです。足元を照らして着実に一歩一歩進んでいくという意味で、富士通㈱の高度成長を支えた山本卓眞元社長の「私は社長になりたくてなった訳ではなく、目の前の仕事を一つ一つ全力で取り組んできたら社長になっていた」とのお言葉が心に残っており、私自身が心掛けていることです。
また、私の人生に大きな影響を与えたのは、山岡荘八著の長編小説「徳川家康」です。徳川家康の言葉で「人生とは重き荷物を負うて 長き路を歩むが如し」もこれに通じる考え方として折に触れ自分に言い聞かせている言葉です。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
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