2017年度 協豊会 安全衛生委員会 講演会を開催しました
~『ヒューマンエラーのメカニズムと安全マネジメント』 講師:立教大 芳賀 繁 教授~

 協豊会 安全衛生委員会では、1月26日(金) 刈谷市総合文化センター(愛知県刈谷市)大ホールにおいて、講師に立教大の芳賀 繁先生をお招きし、災害要因の中でも近年特に注目され、問題となっている“ヒューマンエラー”をテーマに、そのメカニズムとマネジメントについてご講演頂きました。会場にはトヨタ自動車様、栄豊会、協豊会会員各社、協豊会安全衛生委員会関係者を含め、総勢533名が参加され、盛大な講演会となりました。
 
  開会にあたって、協豊会安全衛生委員会の小島プレス工業㈱ 小島委員長より「委員会活動を進めてきたが、重大災害がなかなか減らない危機感の中、もっと働く人の心の部分に寄り添った安全活動が必要。
芳賀先生のご経験に基づく講話を、各社にお持ち帰り頂き、今後の取り組みに活かして頂きたい」とのご挨拶を頂きました。

小島委員長 開会挨拶
  芳賀先生のご講演は、認知心理学からみた“うっかりミスの発生メカニズム”から始まり
錯覚・勘違い=ミステイク」「動作の失敗=アクションスリップ」「記憶の失敗、失念=ラプス」を、身近な日常会話や、続けて「お」の字を書くと、間違って「あ」や「ま」を書いてしまう動作の失敗の実践等を交えて、楽しく判り易くご教示頂きました。
 現場の安全対策については「ルールを決めて守らせるだけでは安全を守れない」とQMS/ISO的安全マネジメントの問題点=マニュアル通りにしかやらない、やりがいのない、つまらない仕事⇒しなやかだった職場が硬直したものになる危険性を指摘されました。
 数値目標達成が重視され過ぎると、データ改ざんなどのコンプライアンス違反に繋がる危険性も、最近新聞を賑わせた実例を元に説明されました。
 
   芳賀先生 ご講演の様子
 

 “しなやかな現場力=人間の弾力性がシステムを守っている”というお話しでは、
安全文化の4つの要素。1.報告する文化、2.公正な文化、3、柔軟な文化、4.学習する文化を紹介されました。
 中でも、“柔軟な文化”について、システムは本質的に危険なもので、人間と組織の柔軟性が危険なシステムを安全に機能させていると分析され、失敗事例よりも成功事例、すなわち日常の業務実態に注意を向けるべきであると提言されました。
 マネージャーに失敗事例しか報告されないと、一つの失敗の再発を防ぐ為に多くの成功事例の芽を摘む可能性があり、「Safety1:失敗の数を減らすことを目標にする」から「Safety2:成功の数を増やすことを目標にする発想の転換が必要とのお話しには、目から鱗が落ちるような感銘を受けました。
 そのような“しなやかな現場力”を育てるには、仕事に誇りを持つ将来への希望を持つ自分の頭で考える等が必要で、また「仕事の誇り」は「公正な組織」で育つと相関図を用いて説明され、最後に改めて、「失敗を防ぐマネジメントから、成功を続ける、そして増やすマネジメントへ」と、会場の皆様に力強くメッセージを送られ、講演を終えられました。
  閉会の挨拶では、アイシン高丘㈱鈴木委員より「人は注意してもミスを犯してしまうという特性を理解した上でリスクを減らす取り組みが必要だと認識致しました。また、失敗を防ぐマネジメントから、成功を続ける、そして増やすマネジメントへ発想を切り替えていく必要性を感じました。
 今日のお話は、安全対策を進める上で、また、安全文化を築いていく上で、大きなヒントになったと思います。是非各社様での安全の取り組みに活かしていただきたいと思います」とのお話しを頂き、芳賀先生へのお礼の万雷の拍手をもって会を終了致しました。

【鈴木委員 閉会挨拶】


一覧へ戻る