おじゃまします -協豊会 池田関西地区副会長に聞く-
 協豊会広報委員会は、11月8日(水)に住友ゴム工業㈱本社(兵庫県神戸市)に於いて、池田代表取締役社長にインタビューを行いました。
 池田社長には会社概要、沿革、企業体質強化へのお取組みや、関西地区副会長として、協豊会活動へのお考えや思いなどのお話を伺いました。
■ 会社概要、沿革についてお聞かせ下さい ■

 1888年にジョン・ボイド・ダンロップ(アイルランド)が空気入りタイヤを発明し、20年後の1909年には日本でゴム産業を起こすことを目的に、英国ダンロップ社の工場を神戸に設立し、わが国初の近代的ゴム工場として創業開始しました。このことが、神戸が「近代ゴム産業発祥の地」と言われる所以です。その後英国の技術者がこの地でゴムの技術開発を行い、1913年には国産第1号の自動車用タイヤを生産、100年後の2013年に我々は、100%石油外天然資源タイヤ「エナセーブ100」の開発に成功しました。これが、100年目の解答です。1930年にはゴルフボールと硬式テニスボールの生産を開始し、1966年には、我が国初となる乗用車用ラジアルタイヤを生産しています。
 戦後の投資が困難な状況の時に住友電工をはじめとする日本資本が過半数を超え住友の経営となり、1963年に社名も「住友ゴム工業株式会社」に変更しました。
 我々は、「住友」と云う名前を大事にしております。400年を超える住友の歴史の中で、「信用と確実」「浮利に趨らず」という精神を後世に伝えていきたいとの思いでおりますので、ダンロップブランドのイメージはありますが、社名から「住友」を失くすことはありえないと考えております。その精神を今後も大事にしたいと思っております。
 1999年の米国グッドイヤー社とのタイヤ事業におけるアライアンス契約締結により、財務体質の改善、日本及び新興国市場における事業拡大を成し遂げましたが、近年ではアライアンスの業績への寄与は限定的となっており、2015年にアライアンスを解消しています。今後は、スポーツ事業、産業品事業では全世界で使用が可能となったダンロップブランドを活用しながら、世界中でタイヤ事業、スポーツ事業、産業品事業と幅広い分野で事業を自由に展開していきたいと考えております。

【企業理念】
 私たち住友ゴムグループは、企業の社会的使命を果たすために、グループ全社員の幸せを追及し、広く地域・社会に貢献し期待され信頼されるグローバルな企業として快適で魅力ある新しい生活価値を創出し続けることを企業理念に掲げています。
 そしてその企業理念を実践するためのバックボーンとして制定したのが「住友ゴムWAY」です。
「住友ゴムWAY」は『企業理念』と『経営ビジョン』を社員が日々の行動の中で実現していくための、「価値観」と「行動原則」「住友事業精神」によって構成されています。
「価値観」では当社が「何を大切にするのか?」というテーマに沿って、「信用と確実」「縦と横のつながり」「目標を高く」「人を育てる」という4つの価値観を示しています。
 また「行動原則」はその価値観に基づいて「どのように行動するのか?」という心構えを明確にしています。
 そしてそのすべてのベースは住友400年の歴史の中で脈々と受け継がれてきた「住友事業精神」です。
「住友事業精神」には「住友の事業は住友自身を利するとともに、国家を利し、社会を利する事業でなければならぬ」という社会に対する強い使命感がこめられており、当グループの企業理念のベースとなっています。


■ 環境変化が激しい中、体質強化のお取組みについてお聞かせ下さい ■

 私が入社した1979年頃はブランド権の問題で自由なビジネスが出来ませんでしたが、現在では産業品もスイス、スロベニアに工場を設立してまいりましたし、タイヤ生産やスポーツ用品生産も全世界に拡大してまいりましたので、会社の向かう方向性や目標を明確にする為に、2012年私たちは、"GO for NEXT"を新たなスローガンに、2020年を目標年度とする住友ゴムグループの新たな長期ビジョン 「VISION 2020」を策定しました。
「VISION 2020」では、「高収益・高成長の真のグローバルプレイヤーになる」とともに、「ステークホルダーにとっての価値向上と、全社員の幸せを追求する」という目標を掲げ、経済的価値と同時に社会的価値を追求する当グループの企業姿勢を織り込んでいます。
 長期ビジョン「VISION 2020」を全従業員に浸透させる為に、私自ら現地に赴き従業員に対して会社が目指す方向性を直接説明し、その内容を社長のブログ「池田の思い」として掲載するなど活動しておりますし、担当役員も工場へ出向いた時には私同様、従業員に対して長期ビジョン「VISION 2020」の理念を説明するようにしております。我々が大事にしている「信用と確実」であったり、「目標を高く持とう」また「縦と横のつながりをもっと強くしよう」そして、「人を育てる」という価値観を、何回も現地に赴いて話を継続することが大事ですし、この様な行動が、全従業員に会社の目指す方向性を浸透させる為には重要であると考えております。
 私とすれば、この長期ビジョン「VISION 2020」を通して、本当に全従業員が幸せになってくれれば、これに越したことは無いなと思っておりますし、従業員から当社で働くことが幸せであるなどのコメントを耳にすると大変嬉しい気持ちになります。
 また、2016年4月には、経営体制も従来の日本本社集中体制から「アジア・大洋州」「欧州・アフリカ」「米州」の三極にそれぞれ担当役員を配置し、日本はグローバル本社として三極のフォローとサポートを行うグローバル経営体制へと移行しました。意思決定のスピードを速め、各エリアで生販一体となった施策をスピーディに進めることで、環境変化に強い経営体質となり、今後の大きな飛躍に繋がると考えています。


■ 安全、品質、環境などのお取組みについてお聞かせ下さい ■

 【安全】
 私としては、安全に対して大事にしなければならないことは「ルールを守る」「安全意識の向上」「管理監督者が責任を果たす」の3項目と考えております。「ルールを守る」は標準作業で定められたルールを確実に守る、「安全意識の向上」は指差呼称、声掛け、現場を明るくする、危険な箇所の見える化など全従業員で安全に対する意識を向上させる、そして安全に対して「管理監督者が責任を果たす」ことが重要であると考えております。例えば中国の工場では休憩所に「安全の木」と言った人工の木を製作し、これに従業員の大事な人の写真を貼付しております。大事なことはその写真の裏に自分の名前と安全宣言を記入して、この人の為にも安全作業を行おうとするなどの安全意識の向上策を行ってくれています。この様に、少しずつではありますが、世界の各工場で安全に対する具体的な取組が増えてきておりますので、今後は活動内容を水平展開しながら安全に対する活動を継続していきます。
 住友ゴムグループのCSR活動基本理念の「安全で働きやすい職場づくり」に基づき、「安全衛生は全てに優先する」を「労働安全衛生方針」のスローガンとし、以下の行動方針を定めています。
1)危険に対する感度が高く、常に安全な行動がとれる「安全な人」作りを最優先に進める
2)職場環境を改善し、管理監督者の責任を果たして、危険ゼロの職場構築で災害ゼロを目指す
3)労働安全衛生に関する諸法令を順守するとともに、外部からの要求事項に対し適切に対応する
 昨年は、災害の原因となる「チョコ停」を撲滅する活動や、一人ひとりの行動特性に着目した安全意識向上活動を展開し、2016年は休業災害が、国内工場でゼロ、グループ全体では11件で前年比30%減少しました。今年も、災害の分析をもとに、管理監督者による過去災害の再発防止活動や、従業員一人ひとりにまで安全意識を植え付けるため過去災害教訓を伝える活動を実施してきましたが、残念ながら、海外事業所において重大災害が発生致しました。このことで、海外の法規制や文化が異なる地において、安全に対するガバナンスをさらに強める必要性を痛感し、現在全力で取り組んでいるところです。
 以上が基本理念ですが、当社は、安全が全てに優先するものであるということを私自身が何度も何度も強く言い続けることが重要であると考えております。

 【品質】
 社長直轄のQC中央委員会が基本方針を各部門のQC委員会を通じ全社に発信し、製品品質と業務品質の重点課題と目標を設定し改善活動に取り組んでおります。
活動実績については毎月マネジメントレビューとしてフォローしています。
基本方針
1)お客様第一 「常にお客様起点でニーズを捉え行動する」
2)継続的改善とスピードアップ「5ゲン主義(現地、現物、現実、原理、原則)
3)全員参加  「自分ごととして主体的に取り組む」
今年度重点課題
 「品質マニュアルに基づいた自部門の役割をやりきる」としております。
 現在、全社でTS16949からIATF16949へ切り替える更新審査を実施しております。我々とすれば継続的に改善し、未然防止を行って、顧客満足度を向上させることが根底にございますので、第三者機関の審査を通して、自部門の役割をやりきれているか確認しております。更に、品質の向上にむけて全工場の指標(不良率や均質性等)を見える化し、トップレベルの指標に近づけるよう工場間や他部署と交流を通して、今まで少し弱いと感じていた横の繋がりを強化し、自部門だけでは対処できない課題解決のスピードアップ化も図っております。更に具体的には、品質レベルを更に向上させる為にも、横の繋がりを飛び越えて、材料メーカーとも課題解決の為の取組も始まっております。

 【環境】
 住友ゴムグループは、地球環境や社会をGENKIにする活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献し、社会から信頼される企業グループを目指しています。
 環境方針「新しい価値を創出し、持続発展可能な社会の実現に寄与します」を掲げ、種々の取組みを行っております。
 今年はパリ協定発効という節目からCO2については注目度も上昇しています。グローバル拠点にも着目し、原料調達から生産・使用・廃棄に至るまでライフサイクルでの削減に、今後さらに高い目標を設定してチャレンジしていきます。
 先程も述べましたが、我々が将来の資源環境の変化、例えば石油が枯渇しても、タイヤを供給する責任を果たす為に、100%石油外天然資源タイヤ「エナセーブ100」を10年以上の歳月を掛けて、開発しました。この事は、我々が環境の変化にも対応して、社会的な責任を果たす事が出来ることをお示しすることにも繋がると考えております。
 環境経営活動として、環境マネジメントシステムISO14001について、2010年にグローバル統合認証を取得し、現在31拠点まで拡大しています。また昨年は2015年版への移行を完了しました。
 環境配慮型商品として、「タイヤが地球環境のために貢献できること」を考え、低燃費、原材料、省資源の方向性の商品を開発してきています。すでに、50%転がり抵抗低減タイヤ、100%石油外天然資源タイヤなどを世に送り出し、昨年11月には、AAA-aという燃費とグリップでラベリング制度最高グレードでありながら51%耐摩耗性能を向上した「エナセーブNEXTⅡ」を上市しました。この「エナセーブNEXTⅡ」は今年の日経地球環境技術賞の最優秀賞を受賞しました。
 生態系の保全ならびに生物多様性に配慮した活動として、植樹活動、里山づくり、ビオトープの
設置、ヒゴタイや国蝶オオムラサキなど絶滅危惧種の保護育成などを各拠点で実施しています。
 これら広範囲かつ継続的な活動に対して、2009年に環境大臣からエコ・ファースト企業に認定され、現在も継続中です。直近では、今年、宮崎工場が緑化推進運動功労者内閣総理大臣賞を受賞するなど、環境先進企業として積極的な活動をしています。


■ 関西地区副会長さんとしてのお考え、メッセージをお願いします ■

 協豊会活動は、トヨタ自動車様からの情報を直接聞かせて頂く機会ですので、重要で貴重な活動であると考えております。私も協豊会活動を通して知見が深まっていると感じております。会員各社もこの貴重な活動を通して得られた知見や情報は、自社の経営に十分活用できると考えております。
 この度の経営者懇談会のテーマは「競争力の強化」でしたが、このことは我々サプライヤーにとっても重要ですし、責任も重いと思います。ですから、トヨタ自動車様の目指す方向性やお考えを直接お聞きできる協豊会活動は会員各社にとってより重要になると思いますし、情報を共有することは協豊会の大きな使命であると思います。


■ ご趣味、座右の銘、健康法などお聞かせ下さい 

 私の座右の銘は「誠心誠意」です。何事も一生懸命に取り組んでいれば、苦しいことがあっても乗り切ることが出来ると思っております。ですから、一度取り組んだ案件は成功するまで一生懸命継続する粘り強さはあると思います。工場へ出向いた時も技術者が抱えている課題について、一緒に改善する為のことを考えます。これも「誠心誠意」、一生懸命さの表れでないかと思っております。ですから、相手の話も真剣に聞く様にしています。
 趣味はゴルフもします。ダンロップフェニックストーナメントは大会会長ですし、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメントは大会副会長ですので、ゴルフは仕事の一環ですね。本当は時間があれば甲子園で野球観戦をしたいなと思っております。



本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
池田社長(写真中央右)を囲んで
釣谷広報委員長 (パイオニア(株)顧問):中央左
  横山広報委員 (リョービ(株)取締役):右
  大村事務局長 :左

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