おじゃまします -協豊会 武山東海地区幹事に聞く-
 協豊会広報委員会は、2017年10月6日(金)愛知県日進市の中央可鍛工業株式会社日進工場において、武山尚生取締役社長にインタビューを行いました。
 武山社長には、会社概要・沿革、企業体質強化のお取組みや、東海地区幹事として協豊会活動へのお考えや思いなどのお話を伺いました。
■ 御社の会社概要、沿革についてお聞かせ下さい ■

 《会社概要・沿革》
 弊社は、昭和19年(1944年)1月に名古屋市中川区で設立され、今年で創業73年を迎えました。創業者である初代社長は、私の祖父にあたります。
 社名の由来は、「中央」は世の中の「中心的存在を目指そう」、そして「可鍛」は可鍛鋳鉄という鋳物の材質の一つですが、当時の主流であった可鍛鋳鉄の分野で「トップ企業になろう」という思いを込めて名付けられたと聞いています。(但し、現在は球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)が主流です。)

 創業当時は、自転車用ハブや鉄道・農機具などの部品・錠前・万力などを生産していました。
工場は、丁度2014年に放映されたリーダーズの様な雰囲気だったと思います。
 トヨタさんとの初めてのお取引は、昭和23年(1948年)になります。
当時は、繊維ブームに沸いており、機械産業からの注文が殺到していましたが、モーターリゼーションを確信した初代社長は、トヨタさんを拡販ターゲットの中心に据え、トラック用「リアハブ」と「ファンプーリー」の補給品の発注をいただいたことが最初のご縁となります。
 トヨタさんとのお取引は補給部品からスタートしましたが、昭和25年(1950年)には最初の号口部品である「トヨエースのフロントハブ」を発注いただき、ちょうどこの頃協豊会へ加入させていただきました。

 その後昭和35年(1960年)には、当時最先端の鋳造自動化設備を投入し、現在の主力工場でもある日進工場(愛知県日進市)を立ち上げ、トヨタさんの成長とともに業績は順調に伸びていき、昭和37年(1962年)には名古屋証券取引所2部への上場を果たしました。
 鋳鉄からスタートした弊社ですが、現在ではアルミも材質のバリエーションに加え、素材から加工・組付までの一貫生産を行っており、売り上げ構成比は、自動車向けが80%、他の20%が産業用機械部品や金属家具製品で自動車以外の比率が比較的高いのが特徴です。
 自動車ではブラケットやハブ、ディファレンシャルサポートなどが主な製品です。また、産業用機械部品は全世界の30%のショベルカー、60%の産業用ロボットに弊社の鋳物部品を使用頂いております。

 《海外展開》
 台湾の会社との技術提携の経験はありましたが、鋳造業は初期投資が大きく、海外展開は遅れていました。しかし、商権の確保と業容の拡大、また国内工場での設備更新に備えた資金確保を目的に、2006年6月に私が社長に就任した直後、中国において二つの会社を順次立ち上げました。
 海外進出にあたっては、「市場の成長性」や「コスト優位性」、「良きパートナーの有無」「同業他社の進出状況」などを総合的に判断し、中国を選択しました。
 結果として中国進出は、同業他社に先駆けて事業展開ができ、現在では連結経営成績に大きく寄与し、国内での大型投資への原資に繋げることができました。


■ 企業体質強化のお取組みについてお聞かせ下さい ■

 自動車産業を取り巻く環境は、足元では「もっといいクルマづくり」の中で更なる軽量化や
良品廉価のモノづくりが、また将来的には、次世代自動車への対応が求められております。
 この様な経営環境を踏まえて、現在「新中期経営計画」の策定に取り組んでいます。
「変化への速やかな対応」を重視し、将来の布石とモノづくりでの強い競争力、それを可能とする強固な経営基盤の構築を柱に、短期的な視点のみならず、中長期を踏まえて議論を始めたところです。

 モノづくりに関しては、国内では主力工場以来の鋳造の新工場建設に着手します。競争力を念頭に置き、既存工場では具現化出来ない改善を織り込み、作業環境にも配慮し、IOTを駆使した次世代の鋳物工場を目指したいと考えています。

 経営基盤の強化では「人づくり」が重要だと思います。常々、会社の競争力の差は、私共経営者を含めた「人の熱意と知恵と行動力、チームワークの差」だと思っています。
 人づくり、次世代のリーダーづくりをしっかり行い、諸先輩方から引き継いだ「たすき」をきちんと繋いでいきたいと思います。


■ 安全・品質・環境・CSR活動についてお話をお伺いします ■

 ≪安全≫
 私は、「縁あって一緒に働く従業員が、家族を悲しませる事なく、元気で定年を迎えて欲しい」と思い、毎日『朝、自宅を出たままの姿で自宅に帰す事』を信条に未然防止活動に取り組んでいます。
 先ずは、「安全は、すべてに優先する」事を、行動で実践できる様に、「止める・(立ち)止まる」事の徹底から始めています。
 活動としては、「人づくり」「リスクアセスメントを基盤としたリスク管理」「環境・設備の整備」を柱としています。
 ここ10年で仕組みは充実し、活動も定着してきましたが、マンネリ化にならない工夫と、
一人ひとりを対象とした、きめ細かな活動に重きを置き、安全行動の取れる人づくりに注力して、このような四つの活動を推進しています。 
危険感受性の向上のために、安全道場の活用、安全唱和、ヒヤリハットの実施
  ② 一人ひとりの安全レベルの把握(KKマッピング)と各人に合わせた安全教育の実施
  ③ 教えあう、注意しあう相互啓発活動
  ④ 通勤や業務での交通安全も活動の対象とし、また、健康・メンタル面維持の活動の実施

 ≪品質≫
 当社の社是は『細心の注意、最良の品』です。
 品質に対する拘り・思いを社是に込めました。
 因みに昭和57年(1982年)にはトヨタ品質管理優良賞を受賞しております。
 安全と同様に未然防止(工程での造り込み)を基本としていますが、世代交代の中で、今一度原点に戻って足元を固めるために、品質保証体制の再構築に取り組み、「不良品を門から外に出さない」を徹底し、お客様への流出不具合0件に拘り、工程の保証度向上に取り組んでいます。
 また、品質に限らず、すべての業務に共通する事ですが、悪い情報こそ「真っ先に」上がり、早期に手が打てる環境づくりを心掛けています。

  主な活動は、このような「再発防止」「人づくり」「工程づくり」などです。
  ① 再発防止・・・「真因追及」の深堀と精度向上、横展の徹底
  ② 人づくり・・・「品質道場」や「鋳造道場」の活用による、一人ひとりの品質意識向上と
           階層別教育の実施
  ③ 工程づくり・・・モデルラインとして、「拘り工程」を作り、横展する
  ④ 「標準類の整備」と「作業観察」を実施し、検査工程の一部自動化を推進

 ≪環境≫
 主力工場がある日進市は、名古屋市のベッドタウンとして全国でも有数の人口の伸び率が高い所であり、会社の存続には「地域との共生」が不可欠です。特に、「騒音」「粉塵」「臭気」には細心の注意を払って操業しています。ISOの取得を機に、定期的に地域懇談会を開催し、地域住民の皆様との双方向コミュニケーションを図っています。
 私共「鋳物業」は、エネルギー多消費型産業であり、生産活動におけるCO2削減は大きな課題です。したがって、省エネルギー、省資源、産業廃棄物削減を重点に、このように取り組んでいます。
省エネルギー・・「電力原単位」の改善や、「照明器具」の省エネタイプ、「LED照明」使用
省資源・・・「歩留まり向上」活動や、使用「原単位」の改善
産業廃棄物の低減活動・・・「ゼロエミッション」を目指し活動し、「リサイクル化」などを推進      

 《その他CSR活動》
「いい町 いい社会」づくりの一環として、
日進市が開催する「ごみゼロ」運動に参加
  ② 交通安全立哨活動
  ③ 花火大会を含めた、地域の様々な行事への協賛
  ④ 地元中学生の体験実習受け入れ
などを行っています。
 また、安定した経営基盤を作るための取り組みとして、人づくりや財務体質の強化をはじめ、最近は企業統治や危機管理、コンプライアンスなどのガバナンスの強化に力を入れています。
 特に危機管理については昨年の熊本地震の際、弊社熊本工場も被災し、想定外の問題が発生し、東南海地震への対応を見直さざるを得ませんでした。
 地震に限らず、今迄に経験がない(いわゆる過去トラのない)大きなリスクは、限られた時間での早急な対応が求められるため、常日頃から学び、備える必要性を痛感しました。


■ 協豊会幹事としてのお考え、メッセージをお願いします ■

 協豊会の発足は昭和18年(1943年)で、もうすぐ75周年を迎えます。
 幹事に就任して、改めて歴史の重みとトヨタさんが協豊会を本当に大切にして下さり、色々とお骨折りいただいている事を肌身で感じています。
 トヨタさんが「もっといいクルマづくり」に邁進される中、協豊会メンバーも「良品廉価のモノづくり」のレベルを上げなければならないと思っています。
 その意味では協豊会の活動は、専門部隊からの情報提供や、時には経営トップの「ナマ」の声が聞け、また、現地視察会を通じて、工場視察や体験試乗を始め現地現物で勉強が出来るなど「最高の学びの場」を与えていただいており、大変有意義な活動ばかりだと思います。
 是非、このような活動を続けていきたいと思うし、私も微力ながらお役に立ちたいと思っております。


■ ご趣味・座右の銘などお聞かせ下さい 

 ≪趣味≫
 以前はゴルフが趣味でしたが、今は腰を痛めて休んでいます。
現在、老後を考えて色々模索中です。(笑)
しいてあげるとすると、リハビリの為に始めた温泉めぐりと、体に良い「」探しでしょうか・・・

 ≪座右の銘≫
 座右の銘は、「敬天愛人」と「失意泰然 得意淡然」です。
「敬天愛人」は西郷隆盛が好んで使った名言ですが、私が幼少のころから祖父である初代社長と共に生活し、身近に見て育つ中でその生き様から学んだ言葉です。
 祖父は熱心に御嶽山を信仰し、日々神に手を合わせ、大儀や使命を踏まえた「志」を持ち、世の為人の為に労を惜しまない姿勢は、今でも鮮明に記憶に残っています。
 私にはまだほど遠いのですが、経営者として心がけたい言葉です。

 「失意泰然 得意淡然」については、私も社長を18年やっていますが、本当に色々な事があります。その時、物事がうまくいかない時はあせらず、落ち込まず、ゆったりと構えて時節の到来を待ち、うまくいく時はおごらず、慎ましい態度でいる事の大切さを実感しています。
 どんな時も軸がぶれる事無く、冷静に立ち居振る舞いができるように、自分への戒めの言葉にしています。



本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
武山社長(中央左)を囲んで・・・
釣谷広報委員長 (パイオニア㈱ 顧問):左
  原田広報委員 (㈱メイドー 執行役員):中央右
  大村事務局長 :右

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